ショート小説「ドッグトレーナーになろう」40代 主婦

ショート小説「ドッグトレーナーになろう」
40代 主婦
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ある40代の主婦の話

主人は自営業

家は持ち家だし、おかげさまでこんな時代でも主人の仕事は忙しく、安定した生活を送ることができる。
だけど、主人は毎日午前様で休日は趣味のゴルフばかり。

子供は大学生の娘と今年、社会人になる息子と9歳になるメスのゴールデンレトリバー。
今まで犬と子供の世話や家事などで自分の時間なんて殆ど取ることができなかった

 

しかし、ここにきて娘も大学生になり、息子も社会人になったのでようやく自由な時間がもてるようになった。

 

40歳過ぎまで人生の殆どを家族のためにささげてきた。
それはそれで、充実した人生であったことは間違いない。

しかし、これからは何か世間の役にたてるような事を自分のライフワークとしてやっていきたい。

一人の人間として周りの人から認めてもらいたい。

 

生きている充実感が欲しい。

 

そういえば先日、ご近所の奥さんが犬と一緒にボランティアを始めたと言っていた。
どうやら、老人ホームへ犬と訪問し、セラピー活動をしているらしい。
犬と一緒に活動するなんて面白そうだしセラピー活動にも興味がある。

犬の、名前はジャズ

主人の音楽好きからこんな変な名前を付けられた。
食べることが大好きで普段は寝てばかりのジャズは何のとりえも無いが、人懐こくて誰にでもなつく
誰にでもなつくのは飼い主としては面白くないが、嫌われるよりはいいし、セラピー犬には向いているらしい

 

ちょうど買い物で奥さんに出あったのでので話を聞きいてみることにした。

訪問活動は月に1度で、犬好きが集まった小さなボランティア団体が行っているらしい。
中心になって活動しているのは40代の女性のドッグトレーナーだそうだ。

 

早速会いに行ってみた。

女性のドッグトレーナーはとても気さくな感じの良いトレーナーだった。

 

トレーナー曰く「何か芸を教えてください」とのこと、
ご老人に芸を披露するととても喜んでもらえるらしい。

しかし、いままでジャズとは散歩しかしたことが無く芸などは教えたことが無い。

 

どうやって芸を教えたらいいのか皆目見当がつかないが、
自分なりになんとか
やってみたらすぐにお手、お変わりはできるようになった

 

そうこうするうちに訪問活動の日がきた。
初めての訪問活動に少し緊張したが
当のジャズは人懐こくて芸までできるので訪問先で思いのほか人気者になった。
自分が教えた芸が、人の心を和ませることができるとは今まで考えたこともなかった。


自分の役割ができたような気がした。
とても充実した活動を見つけることができた。
いぬのしつけって面白い。

 

もっと色々と教えてみたくなった。

そうだ、ドッグトレーナーの仕事ってなんだか楽しそうだな。

ドッグトレーナーになって沢山のご老人に笑顔を届けてあげたい。

よし決めた、ドッグトレーナになろう!

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※登場人物は架空の人物で特定の

団体、個人とは一切関係ありません

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