スカンディナビアン・スタイルで

      2016/07/06

北欧には北欧の犬文化
文と写真 藤田りか子

北欧には北欧の犬文化

日本では欧米というと全て一つにくくられてしまうものだ。が、一つ一つの国で生活してみると、実はその文化や国民性は様々であり、単純に「欧米では…」と十把一絡げに一般論を繰り広げることはできない。

犬文化にしてもそうである。アメリカとヨーロッパでは全く違う(例:クレート・トレーニングを強調するアメリカ、そしてあまり強調しないヨーロッパ)。ヨーロッパ内であっても、南欧は例えばドイツ、イギリス などとはまず、人々のメンタリティも異なるし、それゆえ、犬の飼い方も異なる。そして、北欧も、他のヨーロッパ国とは、やはり異なるユニークな犬文化を持つ。そう、世界は広い。

私が犬文化の中でも特に北欧が好きであるのは、もちろん、自分がここに住んでいるせいも大いにあるが、 彼らの理路整然とした考え方、決して表面的なことに惑わされず基礎を積み上げようとする地道さ、タガを外さないモラル的な態度など、一見「おかたく」見える特性に、 本当の誠実味を感じるからだ。もっとも北欧の人、全員が犬に対して深い誠実さを持っているかといえば、それは言い過ぎとなるだろう。しかし、概してこの真面目さは、スウェーデン犬世界そこここで感じ取れるし、多分、北欧が誇る人への福祉制度の基礎部分にも見出されるのと同じものではないかと思う。

北欧の犬文化を日本で味わう!

アメリカ発の明るいトレーニング方法は、日本にすでにいくつか入ってきているので、おなじみの人も多いはずだ。
ならば、私は北欧スウェーデンの、決してセンチメンタルにならない、でも、犬への感情に注目したり、倫理観を大切にする付き合い方、そこから発展するトレーニング方法というものを、ぜひ、紹介したいと思った。つまり、私が普段、この国で 「素敵だ!」と 感動していることを、ぜひ日本の皆さんにも味わってもらいたいのだ。

というわけで、今年も昨年のセミナーで大好評であったエヴァ・ボッドフェルトさんに、 日本に来ていただくことになった。それに加えて、スカンディナビア・ワーキングドッグ研究所のイェシカ・オーベリーさんも講師として招いた。さらにノーズワークを教えてくれるバルブロ・リーデンさん、と3人揃い!ちなみに、ノーズワーク、発祥地のアメリカ以外で最も爆発的な人気を誇っている国の一つがスウェーデンなのだ。来年は、ケネルクラブ公認のスポーツとなる予定、というほど熱狂ぶり…

そう、今年は、日本にいながらにして、スウェーデンのドッグ・トレーニング文化にどっぷりと浸かってもらおう、という魂胆だ。

北欧の犬文化を日本で味わう!
「ドッグスポーツ(あるいはしつけ)をトレーニングすることを、壁紙を貼る作業として考えてみてください。壁紙を貼るべき、壁が、完成しておらず、ボコボコで平になっているという基礎ができていなければ、いくら壁紙を貼ってもすぐに剥がれてしまいます」とエヴァさん

エヴァさんとイェシカさん二人に共通しているのは、犬をしつける時そして犬に何かのドッグスポーツを教える時、決してテクニックだけ陥らない、という点だ。それよりも、
「いかに犬と関係を作るか」
そこにまず全ての基本を置く。エヴァさんはこんな風に言ったものだ。
「私はクリッカートレーニングが嫌いとは言いません。でも、機械的に犬の口にトリーツを放り込む、という方法には犬と人との協調関係作りに関しては、限りがあると思うのです」

エヴァさんは、今回、インパルス・コントロールに焦点をおいて、レトリーバーをはじめとした、スポーツドッグのためのクリニックを開催する。
その中で、どんな風に協調関係についてのトレーニングをしてくれるのか、とても楽しみだ!エヴァさんにとって、どんなスポーツにおいても、協調関係こそが、基礎であり、最大の「ツール」だと考える。
「ドッグスポーツ(あるいはしつけ)をトレーニングすることを、壁紙を貼る作業として考えてみてください。壁紙を貼るべき壁地が、完成しておらずボコボコであれば、いくら壁紙を貼ってもすぐに剥がれてしまいます」
壁紙というのは、ドッグスポーツでいう技に当たるだろう。要は基礎地ができていないのに、いくら技を入れても、すぐに「剥がれて」しまうのだ。例えば、レトリーバーがホイッスル音を聞かない、といような…。

遊びに中で築く犬との関係性
イェシカさんの、犬のアクティビティ・コントロールは、犬の感情の動かし方について多くを学べるはず!

イェシカさんの、遊びに対する考え方は斬新であり、昨年、日本に新しい考え方を吹き込んでくれたと言ってもいいだろう。彼女は「「犬と遊ぶ」レッスンテクニック」という本を昨年日本で出版した。ここでのイェシカさんの考え方は、エヴァさんと根本的に同じだ。イェシカさんの場合、遊びを利用するわけだが、それを犬と人との関係づくりのツールとしていかに上手に使うか、を語ってくれる…やはり「関係」に重きをおく。

犬との関係作りと並行して、エヴァさんは、犬のオンとオフのスイッチの使い分けを強調する。一方で、イェシカさんは、犬のアクティビティ・コントロールの仕方を教えてくれる。どちらも、犬の感情のあり方にフォーカスをして 、人間がどうやってそこに働きかけて行くか、に焦点が絞られる。

となれば、ここには犬の感情を人間が読む、という作業が入るのは言うまでもない。「呼び戻しはどうやるか」「吠えさせないためには何をするか」というテクニックには決して始終しない。それ以前の問題、犬との感情を使った下地作りに十分に時間をかける。だから、最終的に犬は人に聞く耳を持つ。アジリティの指示に従う、ホイッスルを聞く、オビディエンスの時に集中力を切らさない。この方法論がとても北欧らしいのだ。

私のこの文を読んだだけでは、北欧独特の犬世界観というのは、完全な理解はできないかもしれない。ぜひ、彼らの声を聞いて、そのオーラをも感じてほしい。犬への感情の世界に彼らがどうやって踏み込んで行くのか、犬の何を読んでいるのか….,
テクニックではなく、むしろその感覚を学んでほしいと思う。

ノーズワークのコース については、次回のブログ・コーナーでお伝えしたい。

北欧メガセミナー2016

動物愛護先進国である北欧スウェーデンから、藤田りか子さんをはじめ、BLOGにも登場されている
エヴァさん、イェシカさん、バルブロさんが来日します!
貴重なセミナーで、北欧式のドッグトレーニングを体験してみませんか?

 - ドッグスポーツあれこれ, 海外トレーナーに聞くハウツー!