インパルス・コントロールを培う その2(連載2回目)
動画と静止画で詳しく解説! 日常生活に活かせる大切なポイント
文と写真 藤田りか子
前回(連載1回目)からの続き
エヴァさんのインパルス・コントロールを培うエクササイズの動画をご覧いただきたい。
「『前に行きたい、行きたい!』と犬が頭が前につんのめらせている状態では、絶対に犬に許可を与えてはいけません。そうではなくて、頭をちょっとでも後ろに引いてくれた瞬間!これを捉えます。その後ろに引かれる、というのはもう5mm程度でもいいんです。ほんのちょっと!」
エヴァさんはとりあえず、トリーツを前においてこのトレーニングを始める。トリーツはその後、人に置き換えられる。あるいは、ダミーを投げるスローワーであったり、そして本当の狩猟犬となるのなら最終的に鳥であったり。自分のしたいことをするために前に出るためには、まず感情を落ち着かせること。
これを犬に学んでもらうのが、エヴァのインパルス・トレーニングにおけるもう一つの重要事項だ。
行きたそうなそぶり!でもエヴァさんは何も言わずヴィリアを手でそっと抱いたまま。
こんな風にキョロキョロし始めているのは、犬がまだ落ち着いてない証拠。エヴァさんは決して手を離さないし、トリーツを与えない。ヴィリアの気持ちがストンと落ちるのを待っている。
行きたいんだけど…。
でもエヴァさんはヴィリアに何も言わず、子犬に考えさせる。
行きたいんだけど…。
前屈みにしていた体がふっと後ろに下がった!この瞬間!
エヴァさんは急いでトリーツをボールからとって…
ヴィリアに手元で与えた。このエクササイズの初期で大事なのは、欲しいものは「向こう側にある」のではなく、実は飼い主の周りにある、ということも教える。だから犬をトリーツのところへ送り出さなかった。
このエクササイズはどこでもできる。
エヴァさんはこれといったトレーニング機会に行うのではなく、日常で行っている。
毎日のご飯を与えるときも、一度犬が体を後ろに引いたら、食べさせる、という風だ。
トリーツのみならず、おもちゃも使える(ただし必ずご褒美は体周りから出てくること!)。環境を変えて、例えば周りに犬がいる場所で、ざわついた場所で、トレーニングをして、この行動がしっかりと身につくように強化する。それもできたら、次第にダミーに変えていってもいいし、スローワーがダミーを投げようとする、を誘惑に使ってもいい。その際、もちろん犬を送り出すのだが、犬のテンションがストンと落ちるのを待つ。
この単純なエクササイズは実は非常に大事だ。
犬が競技会の間、ピーピー鳴き出すのは、期待が高まってアクティビティレベルが上昇中だから。フラストレーションの表れである。しかし、いったん「落ち着いたら、自分の好きなことができる」と学習をしてもらえれば、「ピーピー」鳴くという行動は自然に避けられるようになる。落ち着いた犬はフラストレーションがないからピーピーなくことがない。
褒めるだけのトレーニングというのは、悪いことをしても無視する、という単純なものではない。
悪いことが起こらないように、どうやってあらかじめお膳立てするか、その考えに至りつくのがトレーナーの技の見せどころともいえよう。その点で、エヴァさんは本当に様々なやり方を思いつく。
トレーナーの鏡、クリエイティビティの塊である!
インパルス・コントロールを培う その2
- 興奮せず、落ち着いて居ることを教えるエクササイズ
- 動画と静止画で詳しく解説! 日常生活に活かせる大切なポイント