エヴァの「行動じゃない、犬の 感情を変える」ということ

藤田 りか子

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エヴァさんはポッドキャスト(インタネット・ラジオ)で「私たちのベストフレンド」という犬専門の番組を担当しています。

毎回、エヴァによる、いろいろな問題犬のコンサルティング、そして様々な犬のアクティビティや、トレーニングヒントなど、盛りだくさんで、とても楽しい番組(日本の犬専門のラジオ番組にも、エヴァさんに出演してほしいですよね!)。いやぁ、みなさんスウェーデン語が理解できたら、すっごく楽しめると思いますよ!

それができず悔し~い!という方々に、この間聴いたエヴァさんのトークについて、ここでかいつまんですこしお話をします。

 
タイトルは、「犬の分離不安について」。この問題、スウェーデンでもとても多いです。ここでエヴァがいろいろと子犬の頃からすべきことなどをアドバイスするのですが、とてもエヴァらしいなぁ、好きだな、この感覚、と思った発言を以下に再現してみます。

「大事なのは、犬の感情を変えることなんですね。分離不安って、そもそも、ドアが閉められたとたんに、犬が『ママ、パパがいっちゃうよ~』っていう恐怖感に襲われることに基づいているのですよね」
「そのあげくに、犬は恐怖感のあまりにパニックに陥り、部屋のものを壊したり、噛んだりする。と、私たちは、犬が悪さをすると、その行動を変えようとします。犬の悪い行動ばかりに注目しようとします。でもね、そうじゃなくて、犬の持つ感情を変えたらどうでしょう?」
「つまり、『いっちゃうよ~』から『早く行け行け!いったら、楽しいことが起こるかもしれない』というふうに犬の感情をシフトさせていくんです」

 
ここでエヴァさんが提唱している方法がとても興味深いんです。
ドアが閉められると犬は「ママに置いてきぼりにされる!」という感情をもちます。それを変えるために、ドアが閉められること、がとても面白いことの始まり、と理解させるのが、コツだそうです。

ドアが閉められる。そしてドアが開く。すると、次にでてくるのが、たのしいおもちゃだったり、トリーツ探しだったりする。
「つまり、ドアが閉められるっていうこと自体が、ドアが開くチャンス。そして開けばたのしいことが待っている。犬はいつ開くかな、いつ開くかな、と楽しみに待っている。こうして閉められるドアに慣らしてゆくんです」

ドアが閉められることで、犬の気持ちは「飼い主を恋しがる」という感情に集中します。それが、「ドア閉まる」=「おもちゃ、あるいはゲーム」という風に連想させることで、人を恋しがる感情をシフトさせる。

「たとえばオビディエンス競技で犬に伏せをさせたまま、ハンドラーは犬の視界から消えて、そして数分間待たせる、という科目があります。犬が難しさを感じるのは、自分が置いてきぼりにされた、というフィーリングなのですね。それでなかなかこの科目をこなすことができない。しかし、私はこのトレーニングをするときに、『ママが隠れたら、その次にでてくるのは、たのしい遊び』と連想させて、私に対する《恋しい感情》」を別の方向に持っていくんです。私は、犬を置いてきぼりにして、そしてトリーツを隠します。きちんと待っていれば、犬をその場所につれてゆき、トリーツ探しごっこをさせます。これを何回か繰り返すと、犬は『ここで待ってれば、いつか隠したトリーツを探しに行けることができる。ああ、楽しみだなぁ』という感情に早変わり!『ママ、恋しいよ!』から『ああ、早くトリーツを探しに行きたい!』という期待のたのしい感情になります」

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ドアが閉められることに、最初すごく抵抗がある犬の場合、ドアを開けたまま敷居で待たせてもいい、ということ。敷居で待たせて、真向かいの部屋、あるいは面している廊下にトリーツあるいはおもちゃを置く。飼い主はここで「待ちなさいね」と犬に要求をしておきます。そして飼い主は視界から消えます。すると犬の焦点は、飼い主が行ってしまった、ということよりも、むしろ、おもちゃを取れるんだ、という感情にシフトしてゆく。これになれたら、ドアを閉めて、また同じことを繰り返します。こうすることで置き去りにされた、というネガティブな感情を払拭させてゆきます。

まださらなる詳細があるのですが、ここでは割愛します。私が何を言いたかったのか、というと、エヴァのトレーニングの面白さって、感情に訴えることなのですね。だから、前回のブログでも述べましたが「学習理論だけ」ではパーフェクトな犬とのチーム作りは不可能、と彼女は提唱するわけです。感情に訴える、というのは、彼女が遊びを基にして犬との関係を作ろう、というモットーにも通じています。遊びの中で培われる、飼い主と犬の持つ感情。これを、犬に覚えていて欲しいのです。そして、協調することがどんなにたのしいことか!
エヴァはこう言います。
「どんなトレーニングにおいても、大事なこと。感情の持ち方を変えてゆくっていうことなんです」

ね、面白いでしょう?

 
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エヴァのレトリーバーコースに訪問中のプレイボゥチームの面々!(2014年5月スウェーデン訪問から)

 
さて、このラジオ番組にはおまけがありまして、実はエヴァは今回日本に招聘されたこと、そして森山さんとの出会い、前回の日本での滞在、さらに、プレイボゥで行ったスウェーデン訪問についても、もう一人のディスク・ジョッキーである、Guruginさんとのインタビュー形式で語られています。
スウェーデン語ですが、もしよければ聞いてみてください。
(http://traffic.libsyn.com/gurgin/seperationsngesteva.mp3)
ところどころに「森山さん」という言葉がでてくるのが聞こえてくるでしょう。最初の5~6分の間に、日本について語られています。その中で
「私のレトリーバー・トレーニング(スウェーデンにおける)にやってくるというので、待っていたら、いきなりものすごい大きな小山のようなバスが田舎道にはいってきて、そしてその中からたったの20人ぐらいの日本人が、バスからでてきた!とても面白い経験でした!」
そのあと、つくづくエヴァさんはこう言います
「日本人は、とにかく知識欲にあふれていて、本当に素晴らしいです!」

 

 

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藤田りか子(Rikako Fujita)

神奈川県生まれ。動物レポーター・ライター・カメラマン。
学習院大学を卒業後、オレゴン州立大学野生動物学科を経て、スウェーデン農業大学野生動物学科卒業。
生物学修士。
国内外のペット・メディアに向けて動物行動学や海外文化についての執筆を続ける。
現在、スウェーデンの中部ヴェルムランド地方の森で、犬、猫、馬たちと暮らす。犬は断然レトリーバー!
2015年9月に来日し、プレイボゥ主催のスペシャルセミナーを開催予定。