インパルス・コントロールを培う その1(連載3回目)
2016/08/11
エヴァのハッピー・ゾーン作りテクニック!
文と写真 藤田りか子
前回(連載2回目)からの続き
エヴァさんのラッコとの遊び方(動画参照)には、幾つか着眼点がある。今日はその第一をここに示そう。
1.一見、ただ布切れで遊んでいるように思えるが、エヴァさんはラッコに向かって手をやたらと伸ばしていない。できるだけ腕を自分の体の方に引き寄せている。そして手のひらをターゲットにしているのだが、ただ突っ立って手のひらを見せているのではなく、絶えず、動きながら見せる。こうすることで、ラッコはエヴァさんの動きについて行く。(そしてその癖をつけようとしている)
ラッコが常にエヴァを追いかけなければいけない状況にしながら遊びを進めていることに注目されたい。ただボ〜ッと立ったままでいれば、最初のうちは来るかもしれないけれど、そのうち飽きてくる(特にラッコの場合!)。ところが、常に人が犬から逃げていると、犬にとって「人」というのは俄然面白い存在になってくる。こうすることで人について行く癖が培われるだけではなく、「およそ半径50cmの人周り」というものが犬にとってのハッピーゾーンに変わってくる。
「ここに入りたい!」という意欲を培うトレーニングは、実は今後のドッグスポーツを上手にパフォーマンスするための大事な基礎になる(呼び戻しの基礎でもある)。エヴァさんはスウェーデンではこのようなことを、将来オビディエンスやフィールドトライアルを競いたいという人にまず最初に教えている。遊びというのは、飼い主の創造力次第でいくらでもトレーニングとして活用できるものなのだ。それも楽しく...。そう楽しくなければトレーニングじゃない!
もう一つ。ここでは遊びの中でエヴァさんはハッピーゾーンを作ろうとしているものの、遊びの時だけに限らなくてもいい。これを普段から行うのはどうだろう。トリーツを与える時、おもちゃを与える時、犬に追いかけてもらう、体のそばまで来させる、という癖をつけてみる。
ちなみにラッコはすでに手のひらに向かって鼻をつける、というターゲット・トレーニングは入っている。まだ、ターゲット・トレーニングをやったことのない人は、試してみよう。手のひらを見せて犬が鼻をつけたら、クリッカーを鳴らし、トリーツ(クリッカーのない人は、よし!と声で褒めて、トリーツ)。これを何度か繰り返し、その後、手を動かして、犬がそれを追うかどうか試してみる。追ったら、また褒める(あるいはクリッカー)、そしてトリーツ。これを何回か日常で試してみよう。意外にも犬はあっという間に覚えてくれる。
もう一度、じっくり動画を見て、彼女のテクニックをご覧いただきたい。
着眼点はまだまだあるぞ!次回の記事で2つ目と3つ目について紹介しよう。