インパルス・コントロールを培う その1(連載6回目)

      2016/08/11

エヴァの究極のテクニックはハッピー・トレーニング

文と写真 藤田りか子
前回(連載5回目)からの続き

7. 最後にエヴァさんの楽しそうなボディランゲージ、でも、過度に刺激させないよう、
コントロールを持って遊んでいる様子を観察されたい。そして犬に「なんだ、なんだ!」と思わせるよう、「1、2、の3!(とスウェーデン語で言っているのだが)」とスリル感を与えながら、
おもちゃと遊ぶ。遊びに感情を込めるのはとても大事!

 

この遊びで得られるのは、レトリーバーのスポーツを目指している人であれば、物品を必ずハンドラーの元に戻す、というトレーニングになっていること。エヴァさんは、外でいきなりダミーを投げて練習させるよりも、この基礎を遊びの中で植えつけてから、初めて、外でダミーを投げる。

家庭犬として犬を飼っている人は、この遊びから、人について行くことで遊びという楽しい出来事が
起こる、と犬が学ぶ、すなわち、人により惹きつけられるというトレーニングをしていることになる。

一見、
「たったこれぽっちのこと?」
と思われるかもしれない。しかし、どれだけの犬がドッグスポーツを行っている時、あるいは普段の散歩の時、確実に、飼い主についていこう、ハッピー・ゾーンに入ろうとする態度を持っているだろうか?

犬のついていこう態度を鍛錬する トレーニングは、もちろんこれだけではない。いくつものバリエーションがある。そもそも、自分でも自分だけのメソッドを編み出してみるのもいいだろう。自分の犬のことについては自分が一番よく知っているわけだし。

それから、上のような遊び、これは室内だから、ラッコでもできた!でも、同じことを周りに他の犬がいる状態でできるだろうか?ざわざわしたイベント会場でも、飼い主に集中して同じように遊べるだろうか?
どこでも同じようにできるようになれば、一歩前進したことになる。

ハッピー・ゾーンにいたい、戻りたい、という態度さえできれば、インパルス・コントロールは断然、易しくなる。逆にいきなり投げては取らせる、というやり方は、犬の狩猟欲を刺激してその勢いに頼る、という方法でもある。だから走った途端に、飼い主とのコンタクトは途絶えやすくなる確率も高くなる。肝心の回収(こちらに持ってくる)という時点になり、その部分を忘れて、好き勝手にし始める確率が高くなる。

この点はシェーピングを考えてみればいいだろう。シェーピングはバックチェーンと言って、一番最後の完成図から、犬の行動を形作って(=シェーピング)ゆく。ハッピー・ゾーンの構築から始めていれば、犬はその「最後の図」を目標にして外に飛び出し物品を回収するから、犬の気持ちをこちらに集中させやすい。つまり余計なインパルス(衝動)を作らないで済む。
同様にホイッスルを無視して勝手に好きなところに行こうとするインパルス(衝動)もコントロールしやすくなる。ハッピー・ゾーンを意識している犬は、ハンドラーとメンタル面で常に「連絡」が取れている状態だからだ。見えない糸でつながっている、と言ってもいいだろう。

この犬の態度こそが、すべてのしつけ、トレーニング、ドッグスポーツにつながる。これがなければ、逆にホイッスルだっていくらテクニックを磨いても、聞いてくれないだろう

そう、トレーニングに王道はなし!テクニックもなし!地道な積み重ね、があるのみ!

北欧メガセミナー2016

動物愛護先進国である北欧スウェーデンから、藤田りか子さんをはじめ、BLOGにも登場されている
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