ショート小説「ドッグトレーナーになろう」
30代 男性バツイチ
======
ある30代前半の男性のお話・・
一度、結婚はしたが3年で離婚
その後、何回か結婚しようとはしたが、つい一歩が踏み出せず、いつの間にか30を過ぎ・・
今は独身を楽しんでいる
仕事は20代の頃に一度転職し、IT関係の会社に再就職した。
今の仕事は収入もよく、中間管理職として面白いけど、
1日の殆どがパソコンの画面に向かっている仕事に、何か違和感を覚える。
何が自分の人生に足りないのだろうか・・・
結婚をして幸せな家庭を築く?
頑張って仕事をしてお金持ちになる?
どこか違うような気がする。
自分には何が足りないのだろう・・・
思いを巡らせる日々が続いていたそんな時、
ふと、ラブラドールを連れた初老の男性の姿が眼に留まった。
初老の男性はおそらく、散歩の途中なのであろう、
ラブラドールを連れて歩道をゆっくりと歩いてゆく。
「そうだ、犬を飼おう」
「子供の頃、大好きだった犬を飼おう」
男性はすぐに犬を飼い始めた。
しかし、会社勤めでは犬に長い留守番をさせなければならない。
優しい男性は、留守番の間、狭い所に押し込めるのはかわいそうに思い、
トイレとお水だけを用意して部屋の中で犬を自由にさせていた。
男性が仕事で疲れて帰って来ると、
毎日用意した水はこぼれ、部屋の中はぐちゃぐちゃ、家具はぼろぼろ。
そんな毎日が続く。
男性はほとほと困り果てた。
犬にしつけをしなければ。
だけど、仕事が忙しくてそんな時間はない。
「よし、週末の休みに集中してしつけをしよう」
男性は、しつけの本を買い、いぬのしつけの勉強を始めた。
しかし、書いてある通りにやっているつもりだが、全くうまく行かない。
相変わらず、家に帰ると水浸しの床と、ぐちゃぐちゃの部屋、
家具はぼろぼろでそろそろ限界が近づいている。
困り果てた男性は、週末に近所で行われているしつけ教室に通うことを決めた。
トレーナーは男性とほぼ同い年くらいのスポーツマンタイプのイケメントレーナー
一緒に通っているトイプードルの飼い主はどうやらイケメントレーナーに気があるらしい。
何回かしつけ教室に通うと、
トイプードルの飼い主はイケメントレーナーに個人レッスンをお願いしたようだ。
「ほう、個人レッスンがあるのか」
数回しつけ教室に通うと犬の行動も少しは変わってきたが、
相変わらず留守番は嫌いなようで部屋の様子は変わっていない。
男性は早速イケメントレーナーに個人レッスンをお願いすることにした。
翌週からイケメントレーナーが自宅に来るようになった。
人当たりがよく、とても紳士的なイケメントレーナーの言う通りにすると、
どんどん犬がお利巧になっていった。
ちょっとしたヒントで悩んでいたことがこんなに簡単に治ってしまうなんて!
自分のように悩んでいる人は世の中に沢山いるはずだ。
男性は、いぬのしつけに興味を持ち始めた。
「しつけの方法を学んで、自分のように困っている人を助けるんだ」
「よし、ドッグトレーナーになろう!」
-----
※登場する人物は全て架空の人物です。