一晩で変わった犬

こんにちは。

プレイボゥドッグトレーナーズアカデミー講師の矢川です。

今日は3月11日。

12年前、東日本大震災が起きた日になります。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、私の出身地は宮城県の石巻市という所で12年前の震災も現地で経験しました。

震度5以上の地震はこれまでに数回経験していますが、当時の揺れの強さと揺れている時間の長さはそれまでの比ではなかったことを今でも覚えています。

当時の様子については、何度かセミナーなどでお伝えしておりますので割愛させていただきますが、本日は震災時に被災したとある犬のエピソードをご紹介いたします。

一緒に住めない理由

その子は、石巻動物救護センターといういわば被災した犬や猫をお預かりする所にいた犬です。

当時、そのセンターがメインでお預かりしていたのは、飼い主さんが避難所生活のためご自宅で飼えなくなってしまった犬や猫で、
飼い主さんが仮設住宅に移り住めるようになるまでの間、一時的にお預かりする役割を担っていたのです。

私もそこでボランティアスタッフとして活動していました。

そんなある日、ひとりの飼い主さんが1頭のミニチュアダックスフンド（仮名 ジャム君）を連れてきました。

飼い主さんのご自宅は津波の影響で住めなくなってしまったため、飼い主さんとジャム君は息子さん夫婦のお家で一緒に住む事になったのだそうですが、
一緒に住むお孫さんに対して攻撃行動が出てしまうので時々預かって欲しいというものでした。

そのような理由からセンターのお預かりが開始しました。

忘れられない夜

お預かりした当初、飼い主さんは週に2～3回のペースで会いに来てくれたり、お家に連れ帰ってくれていましたが、ある日を境にジャム君に会いに来なくなりました。

連絡をとり、お話を伺うと、お孫さんだけでなく家族の方にも噛み癖が出始めてしまい、息子さん家族が怖がってしまっているとの事でした。
そのため、ご自宅に連れて帰る頻度が少なくなってしまったそうなのです。

ジャム君は結果的にこの飼い主さんから離れて暮らす事となります。

つまりは所有権放棄されてしまったのです。

当時はこのように飼い主さん自身が自分の住める場所を確保する事はもちろん、お世話になる人や近隣に住む人の事も考えねばならず、このような例で所有権放棄されるペットが多くいたのです。

さて、このジャム君ですが、もともとお預かりしている時も首輪を着けたり体を触ろうとすると噛み癖が出てしまう子だったのですが、

所有権放棄が決まった日、私はあまりにいたたまれない気持ちになり、一晩泊り、その子の近くで過ごしました。

するとその夜、日中過ごしている間には見せなかった行動をし始めます。

普段、ジャム君自ら人の方へ近づく事はありません。しかしこの日は、自ら体を摺り寄せてお腹まで見せてきたのです。

ずっと慣れない場所で過ごし、夜も周りにはケージにお預かりしているたくさんの犬がいるだけでしたから、ジャム君は人恋しかったのかもしれません。

そのような事があり、一晩で私とジャム君の関係性は一変しました。
次の日の朝、私にだけお腹を見せるようになったジャム君を見た時のボランティア仲間の唖然とした表情は今でも忘れられません。

犬への愛情

その後、ジャム君は東京からボランティア活動に何度も足を運んでくださったご夫婦の元へ譲渡されました。

後に、このご夫婦から伺った話ですが、犬のしつけ教室に通ったところ、少し残っていた噛み癖も完全に無くなり、とても飼いやすい子になったと連絡がありました。

ジャム君が元の飼い主さんの所で飼われるべきだったのか、それとも東京のご夫婦の元で飼われた方が良かったのか。
結果だけ見れば、後者なのですが、賛否が分かれるところかもしれません。

今でも、私の中では答えが出ていません。

今回お伝えしたい事は、犬への愛情のかけ方やタイミング次第では、犬が短時間で変わる可能性があるという事です(一時的ではありますが)。

「短時間のトレーニングでは絶対に犬は変わりません」というような言葉とは真逆になりますね。

とはいえ、私は「愛情をもっとかけてあげましょう」という言葉を飼い主さんにお伝えする事はありません。
あまりに漠然とした言葉ですし、ほとんどの飼い主さんは十分に愛情を注いでいるのですから。

もし、私が12年前にドッグトレーナーであったなら、噛み癖のあるジャム君に対して一晩一緒に過ごすという選択肢を最初には見つけられなかったかもしれません。

現在ドッグトレーナーの方もこれからドッグトレーナーを目指す方も「犬への愛情」を忘れないでくださいね！

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ある勘違いが所有権放棄に繋がりかけたお話。
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【 お散歩での排泄禁止 】

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